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三島由紀夫「命売ります」読みました

三島由紀夫著の「命売ります」を読みました。きっかけは、 中村蒼が主演するBSジャパンのオリジナル連続ドラマ「命売ります」を観たことです。ドラマのタイトルには「命売ります」(三島由紀夫原作)と表記されていましたが、実際のドラマではIT系のブラック企業を舞台に、会社の変革を果たすために死ぬはずだった社員が…という話で、結果的には原作とは異なるストーリーでした。しかし、「命売ります」というインパクトのあるタイトルと三島由紀夫がこんな作品を書いていたのかと思って興味を持ち、古本屋で探して買ってみました。
読み始めると割と終わりまでスムーズに読み終えることができました。展開も軽い感じで次から次へと進むので、途中で飽きませんでした。読んだ感想は、「面白かった」ですが、結末は、少々意外でしたが、何だか有りがちな感じでした。ネットの感想なんかを見ても、「面白かった」、「三島由紀夫がこんなストーリーを書くのか」という肯定的な評価がある反面、「三島由紀夫でなければ読まない」、「似たような内容の作品は他の作家でもあるなど」ストーリーは一般的という普通の評価もみられました。
調べてみるとこの「命売ります」。昭和43年に週刊プレイボーイに連載された作品だそうです。差し詰めあの純文学の大家が、身をやつして大衆雑誌に通俗怪奇小説を書いたという感じでしょうか。個人的には読んでいて江戸川乱歩の少年探偵シリーズのような怪奇小説の情景が浮かびました。
何でもこの「命売ります」は、新しい帯を付けて再展開を始めた2015年7月から人気が爆発し、計17万部を重版することになったそうです。全然知りませんでした。三島由紀夫の作品では、昔、学生の頃「金閣寺」は読みました。「女神」も読んだ気がします。「金閣寺」は感情移入できた名作だと思いました。ただそれ以来 、特に三島由紀夫の本は読んでいませんでした。
三島由紀夫と言えば、昭和45年の割腹自殺により何か国粋主義の恐い人というイメージがありますが、元々は東大法学部を卒業し大蔵省に入省した普通のエリート官僚でした。この「命売ります」をあの自殺と無理矢理関連付けるとすると、このストーリーの最後で主人公は警察に被害を訴えても信じてもらえず警察署から追い出されます。何にも属さないと主張していた主人公が、本人も意識せずに所属していた日本国という組織に見放され、本当の天涯孤独を感じたのではないかというのが勝手な推定です。
今回、久し振りに三島由紀夫の作品を読んでみると、その厭世観と破滅願望などが感じられて意外と感情移入できました。AI時代の現代人に響くものがあるのかもしれません。何れにしてもなかなか面白い作品を読むことができました。