ベストチョイスシンドローム

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「君の名は」3つの超常現象の組み合わせによる混乱

映画「君の名は」は、以前にレンタルでDVDを借りて観ましたが、1月3日に地上波で放送されたので、改めて観ました。以前レンタルで借りた時は、初日に1回観て、翌日返却する前にもう一度観ました。2回観ると、時系列のストーリーが理解でき、各シーンとの繋がりが良く分かりました。今回のテレビ放映は、三回目となるので、ストーリーは理解できましたが、それでも改めてなるほどと思うシーンもありました。
「君の名は」は、複雑で1回観ただけだと、よく分からないという声もあるようです。同感ですが、これは、SF映画によくある3つの超常現象が混在しているからなのではないかと思っています。
一つは、「入れ替わり」です。これは、大林宣彦監督の映画「転校生」に代表される入れ替わりです。勿論、実際には有り得ないことですが、入れ替わることにより自分と異なる体と生活と共に過ごすことで、周囲に影響を与えながら、入れ替わった相手に対する互いの理解を深める展開というのが一般的です。「転校生」でも「君の名は」でも、男女入れ替わりですが、これは入れ替わりの混乱が同性より大きくなり、面白くなるからでしょう。「転校生」では、入れ替わった相手と日常で継続して向き合っているので互いに状況を理解しやすいのですが、「君の名は」では、互いに知らない存在の中で、逐次、入れ替わりが発生・消滅するので、ますます混乱が大きくなっています。ただ、これだけなら観ている側として、割と理解できると思います。
「君の名は」の理解困難な要素として二つ目は、「瞬間移動(テレポーテーション)」です。東京と糸守を瞬間に移動し、初めは何処なのかわからないまま展開するので、主人公が自分の状況を理解できないところから始まります。もし、自分の生活の中で入れ替わりが起きる展開なら、それはそれで別のストーリーになるでしょうが、混乱はより少ないと思いますし、観る側も凡そ予測できる展開になると思います。
そして、三つめが「君の名は」のストーリーを最も複雑にしている要素だと思いますが、「タイムスリップ」です。主人公の男女が入れ替わると同時に場所が変わるだけではなく、それが約3年の過去と未来が入れ替わっているところにあります。初めのうちは、それは気づかずに過ぎていくことになっています。これは、突っ込みどころとして、主人公も新聞等で初めに気づくだろうと指摘されそうですが、そこは物語としてあの大災害が起きるまで判らないことになっています。この時間のずれが、後半のスケールの大きな展開に繋がって行きます。
恐らく、「入れ替え」と「瞬間移動」であれば、映像の綺麗なちょっとコメディタッチなアニメとして終わったかもしれませんが、主人公の記憶が徐々に薄れていくという設定とともに、三つ目の時間のずれが、その後の複雑な展開と2人の出会いに繋がる展開にダイナミックなストーリーとして進んでいく要因になったのではないかと思います。
とても良い映画だと思いますが、一つだけ違和感があったのが、クライマックスともいうべき糸守での出会いのシーンで、三葉が顔を赤らめてアニメチックに照れるシーンですが、ここは正統派のラブシーンで締めて欲しいと思いました。ただ、アニメ映画でこれだけ感情移入ができて、細やかな二人の出会いがスケール大きな展開に拡がるところが、ストーリーに破綻がなく心に沁みました。3回目になると一つ一つのシーンに後段への関連や繋がりがあることが判り、完成度の高さを改めて感じました。