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ベストチョイスシンドローム

あらゆることに対して最適化を目指す最良選択症候群

梶井基次郎「檸檬」

著作権の切れた過去の名作を読むことができる青空文庫青空文庫ビューアというアプリをインストールしてたまに利用している。青空文庫の是非は置いておいて、青空文庫の2014年4月の閲覧数のランキングデータを見ることがてきる。現在のところ1位は「こころ」(夏目漱石)である。3位は「雪の女王」(アンデルセン)、4位は「走れメロス」(太宰治)、5位は「我が輩は猫である」(夏目漱石)、6位は「雨ニモモマケズ」(宮沢賢治)となっている。何れも名作揃いである。「雪の女王」は、映画の影響であろう。因みに7位は「ドグラ・マグラ」(夢野久作)である。

さて、2位は何かというとちょっと意外な作品である。「桜の樹の下には」(梶井基次郎)。4月ということで季節的な要素はあったのかもしれない。「檸檬」は22位となっている。2013年の年間ランキングでは、 「檸檬」は22位、 「桜の樹の下には」は35位となっている。他には「Kの昇天」136位、「愛撫」195位 、「交尾」442位となっている。

梶井基次郎について詳しい訳ではないが、高校の教科書に掲載されていた「桜の樹の下には」と「檸檬」が強烈な印象として記憶に残っている。その後文庫本を一冊購入したが「冬の蠅」などもその描写があまりにも弱々しく儚げで印象的であった。退廃的な半ば狂気じみた心象の中に目に浮かぶような情景描写と死と隣り合わせの焦燥感が入り混じった寂しさが感じられる独特の雰囲気を醸し出した作品だと思う。個人的には昔は少々狂った小説と思われたかもしれないが、プレッシャーとストレスの高まるメンヘラな現代社会においては、この雰囲気が読者の共感を呼ぶのかもしれないと思う。比較的短編が多いことも青空文庫では好まれるのかもしれない。

陰鬱な情景のなか、丸善で積み重ねた本の上にカーンと冴えた檸檬を置きダッシュする。現代に復活してテレビCMを制作したらどのような作品になるだろうか。梶井基次郎の作品を映像化するには相当な技術が必要だと思う。



梶井基次郎全集 全1巻 (ちくま文庫)

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