読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ベストチョイスシンドローム

あらゆることに対して最適化を目指す最良選択症候群

「高校生からわかる資本論」(池上彰)を読みました。

最近柄にもなく近代史に関心がある。と言っても、太平洋戦争やケネディ元大統領に関する本(「JFK 未完の人生」を読みました。( ジョン.F.ケネディ 勝手にベストテン) - つまらない日記)やヒトラー歴史人(別冊世界史人)「ヒトラーとナチスの真実」を読みました。 - つまらない日記)を読むうちに、昭和の時代背景の知識を多少得た程度である。ケネディ大統領の時代、様々な国際問題が生じたが背景としてあるのは共産主義への脅威である。また、ヒトラーが政権を担うまでは社会民主党が弱体化し、 共産主義の台頭が脅威となっていたらしい。

そんなことで取り敢えず人生で一度でもマルクスに触れてみるのも良いだろうと思った。マルクスと言えば「資本論」のようだが、文庫本は難しそうである。それで解説本みたいなものを探していたら見つけたのが池上彰氏の「高校生からわかる資本論」。リーマンショック以降、労働者派遣村など失業者増大が社会問題になった。池上氏が、もう一度資本論に照らして資本主義経済の功罪を認識しようと実際に高校生に授業した内容を纏めたものである。文体も話口調でテープ起こしをしたような語り口でひじょうに読みやすい。幾つか印象に残った記述を挙げてみる。

マルクスは「共産党宣言」で資本主義を批判した。共産主義が第一に獲得すべきは民主主義と謳っている。武力により革命を起こし共産主義を実現しようとするのがマルクス・レーニン主義
→ロシアで共産主義が上手く行かなかったのはまだ資本家が勃興していなかったことと、民主主義が充分に行き渡らなかったからではないだろうか。

・商品、価値、貨幣、労働などを分析・理論化している。資本家は労働を資本という命を吹き込まれた怪物に変容させる。
→「資本論」で語られる基本原理はそれほど難しいものではないと感じられる。損益計算書の構造でありマーケティングの入り口であるとも解される。

資本論の文章は分かり難く池上氏も若き頃読むのに挫折してしまう。
資本論の文庫本を立ち読みしたが確かに読む気にはなれないかも。もっと分かり易く書けば資本論も広まったかもしれない。

・価値増殖の意識的な担い手になった時、貨幣所有者は資本家になる。人間が資本家になるのではなく、資本が資本家という人間(人格化された資本)になる。
→大小限らず社長というのは多かれ少なかれ資本が憑依した非人間的な存在となる。社長と社員は別物である。

・労働者が労働力の分のみ(必要労働)だけではなく剰余労働を行うことで経済は発展し社会は豊かになる。
→労働は資本家による搾取という悪い側面だけではなく社会と個人を発展させる原動力である。
 
・「洪水は我亡き後に来たれ」が資本家の本質。
→資本家は現在の貨幣増大に注力するもので将来の社会のことなどは考えていない。経営者に道徳的な所作を求めるのは基本的には難しい。

・原始社会→奴隷社会→封建社会→資本主義→共産主義と社会は進化する。
→現在「資本主義→共産主義」というのは誤りと結論づけられている。戦後は、もしかしたら正しいのではないかという疑惑が様々な国際問題を引き起こした?

・工場で大勢が分業で働くようになることが資本主義の始まり。大勢で働くことで生産性が高まり個人の能力も向上する。
→協業することで皆とより良いものを作り上げることができる。それが社会を発展させる。集まることが大事ということ。

・機械の導入により労働密度は高まり労働の価値は切り下がる。
→機械により人間は仕事を奪われ機械に隷属し人間の価値が低減する。

・産業循環の局面変転で労働者の現役軍と予備軍の比率が変動する。
→本来労働者予備軍たる定年退職者が定年延長により現役労働者となることで現役労働者の労働者予備軍化が促進される?

・全ての民族が世界市場のネットワークに組み込まれ資本制の国際的性格が発展する。
マルクスは現代のグローバル化M&A進展を予見していた。

・資本性的私的所有は終焉を迎え収奪者の私有財産は略奪される。
最後の審判はいつ来るのか?

など結構示唆に富んだことが書かれているようです。多少分かったような気になるのがこの本の素晴らしいところ。勉強になりました。 私も年々仕事が増え労働密度が高まっているので納得できる記述も多かったです。



池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」

池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」