ベストチョイスシンドローム

あらゆることに対して最適化を目指す最良選択症候群

青空文庫創始者富田倫生氏の逝去について

青空文庫を創設された富田倫生氏が亡くなったことを新聞の記事で知った。青空文庫はアプリ「青空文庫ビューア」を使用して、時折、利用していた。青空文庫のことは、スマホを購入してアプリを見ていてその存在を知った。それまでは、インターネットを随分使っていたつもりだったが知らなかった。過去の名作を無料で読むことができるのだから、これはいいなと思った。青空文庫は、著作権の保護期間を過ぎた作品をネットに公開しているホームページで、1997年に創設され公開されている。

著作権の保護期間を過ぎた作品をネットに公開することは賛否両論があるかもしれないが、このホームページをインターネット黎明期の1997年から始めていることに、卓越した先見の明があると思った。以前に「グーグル/ネット覇者の真実」を読んだことを記したが(「グーグル/ネット覇者の真実」を読みました。 - つまらない日記)、この中でグーグルは2005年から蔵書を電子化する図書館プロジェクトを推進したが、世界中で著作権保護との軋轢を生じ問題となったことが書かれている。確かに著作権を蔑ろにするようなやり方は認め難いものではあるが、「グーグル/ネット覇者の真実」では、図書館プロジェクトについて次のような考え方が記されていた。

書籍のうち、一部のベストセラーになるようなものは、時間が経過しても売れるので書店に並んでいるが、大多数の書物は書店から消えてしまう。時代を超えてある人にとっては有用な情報となりうる価値あるものが、埋もれてしまってその存在すらわからない状況となってしまうのである。しかし、ネットでその書物を検索できるようにし、必要とする人に知識を伝えることができれば、世の中に役に立つのではないか。元々はそのような趣旨であったようだが、米国内でも解決されていない問題を(2012年に米国出版社協会と和解済み。)いきなり世界で展開したので混乱を巻き起こした。社是の「邪悪になるな」を逆に誤解されてしまった面もあるようだ。

青空文庫のホームページを見ると、1997年にこのサービスを開始するにあたって、同様の趣旨があったと思われる。グーグルに先立つこと8年前にこのサービスを世に送り出していることは驚きである。1997年といえば、漸くインターネットが普及し始めた頃である。グーグルは、独自に開発した自動読み取り機で書籍を大量に電子化していたようであるが、 青空文庫はボランティアの協力者もいたようだが、相当の手間をかけて作業していたことは想像に難くない。しかも、原作に忠実であるよう腐心していた様子も伺える。

私がどうこう言えるものではないが、過去の著作権保護切れの名作が100円ショップで販売されている世の中で、富田氏が61歳という年齢で亡くなられた記事を読んで、少々痛ましい気持ちがした。ご冥福をお祈りします。