ベストチョイスシンドローム

あらゆることに対して最適化を目指す最良選択症候群

赤毛組合(赤毛連盟)のような話

コナン・ドイル作のシャーロック・ホームズシリーズの中でも「赤毛組合」といえば、多くのシャーロッキアンがベストテンには入れるであろう名作である。ある男が赤毛の人のみを募集するという奇妙な求人広告により就いた仕事は、辞書を書写するだけで高給が貰えるという怪しげなものだった。そして、それはある大事件へと発展していく。 シャーロック・ホームズが言う「我々の身の回りに起こる些細な出来事が、実は大事件の発端である」というストーリーの真髄のような話で「これは面白いことになったぞ、ワトソン君。」なのである。

ところで、先日、我が家が取っている地方紙の朝刊に求人のチラシが入っていた。近所の会社のパート募集のチラシであった。勤務は平日昼のみで仕事の繁閑に併せて出社すればよいという内容だった。時折、パート募集のチラシは入るので、ありがちなパート募集チラシだと思った。

ところで、妻は結婚するまでは、工場、店舗などで生産や販売、営業などの仕事をやっていたが、子供ができてから仕事を辞め、世を忍ぶ仮の専業主婦として過ごしている。以前から仕事をしたいと言っていたが、子供が小さい時は難しいと諦めていた。我が家もサラリーマン家庭なので経済的に決して余裕がある訳ではないが、何とかなっているので急いて考えるほどではなかった。しかし、子供が小学校高学年になったので、少し本気で考えていたようだ。ただ、土日もフルタイムで働くのは大変なので、軽めのパートがないかと漠然とは考えていた。できれば工場などの内勤で平日のみの仕事がよいと言っていた。

前出の会社は、勤務は平日のみで、繁閑に合わせて出社する勤務体系で、閑散期は時間も短いようだった。それで思い切って応募してみることにしたらしい。以前、この業種の経験があったことも応募の動機になったようだ。電話をしてみると「明日来てください。何なら今日の午後でもいいです。」と言われたそうだ。履歴書を用意して翌日、面接に行った。5人ほど応募者がいたが、面接後、妻だけが工場内を案内され、その場で「採用が決まったので明日から仕事に来てください。」と言われたそうだ。翌日、出社すると、今時珍しいアットホームな雰囲気で、久しぶりに新人が入ったので、みな親切に仕事を教えてくれたそうだ。社内の人に聞くと今回延べ15名くらい応募者がいたそうだが、採用は妻1人だけだったとのこと。余程、妻が優秀だったのだろうか。

勤務時間は不定期で、夕方までが多いが、納期に合わせて、昼までだったり、休みだったりする。作業は、簡単な梱包や機械操作の仕事などをやっている。

しかし、この一連の流れを見ると私的には「赤毛組合」を思い出してしまった。考え過ぎではあるが、妻を採用するための仕掛けではないかという疑念が脳裏をよぎる。これは現実なので、冗談でもそんなことは有り得ないとは分かっている。しかし、妻の留守中に何か起こるのではないか少々心配なので、出勤中の家の戸締まりには注意しようと言っている。

ただし、「赤毛組合」と決定的に違う点が一つある。赤毛組合は極めて高給であったが、このパートの給与は、ほぼ最低賃金である。単に条件の悪い成り手の少ないパートに就いただけかもしれない。