ベストチョイスシンドローム

あらゆることに対して最適化を目指す最良選択症候群

電王戦を継続すべきか否か。

プロ棋士対コンピューターソフトの団体戦5番勝負「第2回電王戦」は、プロ棋士チームが1勝3敗1分でコンピューターソフトチームに敗北し、幕を閉じた。ニコニコ動画の放映の視聴者も延べ190万に達したということで、日頃地味な将棋に注目が集まったのは良いことだと思う。私は、土曜日の合間に所々放映を観ていた程度だったが、最終局の三浦八段対GPS将棋は、終盤からスマホのニコ動画面をHDMIケーブルで我が家の40型テレビにつなげて観ていた。

みると相矢倉戦なのに先手の三浦八段が一方的に攻められ、後手陣を攻めることなく不利な局面であった。A級棋士がコンピューターに投了してしまうのだろうかと多少逆転を期待しつつ観ていたが、果たして投了となった。その後、大勢の記者たちに囲まれてのインタビューとなったが、何とも重々しい雰囲気であった。ニコ動のコメントでも、三浦八段が敗因を語るシーンで「みんな本当にこれを見たかったのか?」というのがあり印象的だった。

この電王戦。来年も第3回を実施するかは、概ね3つの考えがあると思う。
(1)プロ棋士と将棋の名誉のために実施しない方がよい。
(2)コンピューターとプロ棋士の結果がどうであれ人間同士の将棋は廃れることはないので今回のように実施してよい。
(3)コンピューターは真にプロを超えたことを示すために、来年はタイトルホルダーと対戦すべき。

今回の電王戦は、塚田九段の凄まじい粘り、船江五段とのハイレベルな棋譜など話題も多く、将棋の面白さを伝えることができたと思う。しかし、今のカタチの対戦は、興味はあるがもうやらなくてもいいような気がする。これが将棋に限った話で、囲碁ならまだ人間が強いといった程度の話なら良い。しかし、根底には、現代社会において、徐々にではあるが、あらゆる面でコンピューターが人間を凌駕し、その影響が社会に忍び寄っているように思える。

日経ビジネスオンラインを読んでいると、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の エリック・ブリニョルフソン教授が、コンピューターが雇用を奪ったことを実証的に提示した著作「機械との競争」が、米国で話題を呼んでいるというコラムがあった。これは、コンピュータの発達による生産性向上のため、経済が成長しても一部の資本家の富が増えるのみで、雇用は悪くなるとの見解のようである。映画「A.I.」で観たような、アンドロイドが普及した結果、増加した失業者がアンドロイド破壊ショーで憂さ晴らしをする世界も現実化しつつあるのか。

冷静に考えると、今回の結果もチェスのディープブルーの時から予見されていたかもしれない。将棋は持ち駒を使用できるからチェスより複雑といわれたが、遅かれ早からこの時は来ただろう。囲碁モンテカルロ法の応用などが研究され機械学習が高度化すれば、いずれは・・・と思う。

三浦八段が、GPS将棋は1台でも強いと分かっていましたとコメントする姿を見て、興味本位で(もしかすると怖いものみたさで)観ていた自分も、本当にこのシーンをみたいと思うか自問自答してしまった。そうは言え、これだけ盛り上がった大会を止めるのも惜しい気がするし、日本将棋連盟も固辞すると非難されそうだ。もし、電王戦を継続するなら、個人戦で相手は新四段やC級昇級者くらいにしてはいかがだろうか?個人的にタイトルホルダーがコンピュータに負ける姿は見たくないと思う。


機械との競争

機械との競争