ベストチョイスシンドローム

あらゆることに対して最適化を目指す最良選択症候群

ジェレミー・リンとパット・ライリー

アメリカのプロバスケットボールリーグNBAでニューヨーク・ニックスのジェレミー・リンが注目を集めているようだ。何といってもハーバード大卒である。アイビー・リーグ出身選手としては、イエール大卒のクリス・ダドリー以来だそうである。因みに彼は、フリースローが苦手なことで有名。まあ、シャキール・オニールもかつてそうであったが。NBAは、90年代にTVでよく観ていた。横浜アリーナで行われたトレイルブレイザーズの試合を観に行ったこともある。(相手がどこのチームか忘れてしまったが)

先日、NHKのBSでニックス対バックスの試合を放映しており、初めてジェレミー・リンのプレイを観た。確かにクイックであるという印象であった。身長は191㎝で低いのだが、パス、シュートの動作が一瞬他の選手より速く感じられた。番組の中で紹介されていたが、ジェレミー・リンのシュート、ペネトレイトなどの実際の動作時間を測定したところ、NBAトップクラスだったという。また、勝負どころのシュートを見事に決める。やはり騒がれているだけあって、スゴイと思ってしまった。

昔、ニューヨーク・ニックスのヘッドーコーチを務めたパット・ライリーが書いた「ザ・ウイナーズ」という本を買って読んだ。パット・ライリーは、マジック・ジョンソンがいた黄金期のロサンゼルス・レイカーズのヘッドコーチを務め、マイアミ・ヒートを優勝に導いた名将である。パット・ライリーの言葉で印象にあるのが「タレント・クッション」という言葉である。

ヘッドコーチはチームの個人の能力を最大限に引き出すための戦術(具体的には、オフェンス、ディフェンスのフォーメーション)などを構築し、チームを勝利に導こうとする。フィル・ジャクソン監督のシカゴ・ブルズ全盛期に「ブルズのフォーメーションは電話帳1冊分もあるが、デニス・ロッドマンは移籍後短期間でこれを理解した。」とテレビで解説者が言っていた。戦術である程度強いチームを作ることができる。

ところが、各選手が100%の力を発揮して最高の戦術を用いても、勝負どころでは勝てない。カンファレンスファイナル、ファイナルを勝ち抜くチームを作るためには、勝負どころでヘッドコーチの戦術とは別の選手個人の傑出した能力(タレント)で勝敗が決まるという。普段は80~90%の力で他の人の100%並みのワークをこなし、いざという時に100%の力で傑出した能力(タレント)を発揮し、チームの勝利に貢献するということである。この能力の余裕をタレント・クッションと呼ぶらしい。

例えば第4クォーター残り1分で3点ビハインドの時、嘗てのマイケル・ジョーダンはディフェンスに誰がいようと1対1で(1対2でも)ペネトレイトでシュートを決め、しかもファウルをもらってフリースローの3ポイントプレイで同点に追いつくことができた。こういった個人の能力が結局勝敗を決める。パトリック・ユーイング時代のニューヨーク・ニックスがカンファレンス・ファイナルまで進んでも、当時のシカゴ・ブルズなどに勝てなかったのは、ニックスにこの「タレント・クッション」がなかったというようなことをパット・ライリーが述べていた。

組織においても、ほどほどの人材がアップアップ(100%)で仕事をこなしながらまずまずの業績をあげていても、新規事業やトラブルなどの嘗てない状況に陥った時、人材がどれだけ力を発揮するかで真の業績が問われる。歴史に"if"は禁物だが、もし、パトリック・ユーイング時代のニックスにおいて、ジョン・スタークスの代わりにジェレミー・リンがいれば、パトリック・ユーイングにチャンピオンリングをもたらし、パット・ライリーは優勝監督としてニューヨーカーの絶賛を浴びただろう。特にスパイク・リーは絶叫したであろう。

ジェレミー・リン。勝負強さではマイケル・ジョーダンを彷彿させるものを感じた。ニックスで活躍するジェレミー・リンを観て、ふとこんなつまらないことを思ってしまった。それにしてもパット・ライリーってかっこいいオジサンだと思った。映画「ウォール街」でマイケル・ダグラス演じる「ゴードン・ゲッコー」とイメージがダブってしまうのは私だけだろうか。


ザ・ウィナーズ

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